シエナからアレッツォに到着したのが1時半すぎだったので、サン・フランチェスコ教会の「聖十字架伝説」を見る前に、まずはランチすることにしました。
到着前に tripadvisor のレビューを読んで選んだ郷土料理を出す目ぼしいレストランの中から、特に美味しそうで、なおかつお目当てのサン・フランチェスコ教会にも近い Cavour 42 というお店に行ってみました。
リゾットと手打ちパスタ
店の中に入るとすぐにお店のご主人と思しき男性が出迎えてくれました。
とても感じがよく、ときどき英語の単語につまりながらも、メニューの質問にそれは丁寧に答えてくれます。
お昼はプリミだけで軽くいきたい気分だったので、目移りするメニューの中から、ラグーのリゾットとトリュフの手打ちパスタを頼んでみました。
まずはリゾット。
ラグーとリゾットの組合せは絶品です!
こんな組合せがあるんだ!と美味しくて嬉しくなりました。
パルミジャーノ・レッジャーノととても良く合います。
トリュフは、日頃あまりお目にかからない食材なのでつい頼んでみたくなるのです。
自家製手打ちパスタとの組み合わせは王道ですね!
レビューを読んでいると、このお店のタリアータやカルパッチョとトリュフの組合せもおススメのようですよ。
全部美味しい幸せなランチ、もちろん完食です。
ヴィン・サント
パスタとリゾットを美味しくいただき終わるころ、お店のご主人が黄金色に焼き上げられたビスコッティとガラスの瓶に入った琥珀色の飲み物を持ってきました。
「これはこの地方のデザートワインで、ヴィン・サントといいます、ちょっと味見してみませんか?」
そう言いながら、グラスに少し注いでくれました。
飲んでみると、ブランディ―のような深い風味と甘やかなレーズンを思わせる味。
なにコレ!
わたしは普段は甘い飲み物は飲まないのですが、これは!!!
素晴らしいです?
ご主人はわたしたちがヴィン・サントを気に入ったのを見て、ヴィン・サントの瓶をテーブルに置いていってくれました。
その日は忙しくなかったからでしょうか、 どうやらデザートはサービスのようです。
さてさて、ヴィン・サントは「聖なるワイン」という意味のデザートワインです。
トスカーナ地方が起源と言われていて、原料にはトレッビアーノ(Trebbiano:フランスではブランデーの原料でもあります)やマルヴァジーア (Malvasia)などの白ブドウがよく使われます。
また、ヴィン・サントは、藁の上で乾燥させて糖分を凝縮させたぶどうから造られたことから、藁ワインとも呼ばれています。
フランスにも同じような製法で作られるヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)というその名もずばり藁ワインというよく似たワインがありますね。
ヴィン・サントに関しては、現在は藁ではなくてネットに入れたり、吊るしたりして乾燥させることも多いようです。
そうしてレーズン状になったぶどうを搾って発酵させ、最低3年、しばし5~10年熟成させます。
熟成には元々は栗の木で作った樽が使われていました。
栗材は多孔質で樽の中のワインが蒸発しやすいため、樽の上部に空気の部分(アレージ ullage)ができます。
アレージがあるとワインが酸化することできれいな琥珀色になるなど熟成に利点がある反面、必要以上の酸化はワインの質を落とす可能性もあります。
20世紀になってからは栗樽に替えてオーク樽を使うことが増えましたが、樽いっぱいにぶどうの搾り汁を入れずにアレージを残し、伝統的な味をキープできるよう工夫されているようです。
ヴィン・サントはトスカーナのキアンティ地区で造られるものが最も有名とのこと。
トスカーナ地方では、カントゥチーニ (cantuccini)やビスコッティ・ディ・プラート(Biscotti di Prato)と呼ばれるアーモンド入りのビスコッティをこのワインに浸しながら食べるのだそうで、わたしも出してもらったビスコッティをヴィン・サントに浸してみます。
お店で焼かれた自家製ビスコッティは、アーモンドとレーズン入りでとても香ばしく、サクッとしています。
アメリカで普段お目にかかるビスコッティとはちょっと違う…もっと甘さ控えめだし軽やかな味。
これをヴィン・サントに浸して一口。
あぁ?
これは…想像以上に幸せな味です。
食後なのに、どんどん食べたくなります。
ひとつ、ふたつ…、とヴィン・サントに浸しては食べ、少し飲んで、を繰り返し、気付いたら出されたビスコッティ全部、ふたりでぺろっと食べてしまいました。
レストランにはもう一組ビジネスと思しきスーツを着た紳士3人がランチを食べ、デザートに突入していたのですが、
わたしたちがヴィン・サントとビスコッティを食べているのを見て、僕たちにもヴィン・サントを持ってきて、と注文していました。
きっと地元の人たちにとってはなじみのあるデザートワインなのでしょうね。
実は、彼らのデザートもとても美味しそうだったので、またもやデザート隠し撮りを実行してしまいました。
ヴィン・サントの余韻に浸っていると、キッチンからシェフの女性があいさつに出てきてくれました。
今日食べた美味しい料理はこの人が作ってくれたのね~?
褒めちぎったのは言うまでもありません。
Trattoria Cavour 42 場所とレビュー
Via Camillo Benso Conte di Cavour 42, 52100, Arezzo Italy
サン・フランチェスコ教会から歩いてすぐです。
おわりに
いかがでしたか?
その土地の料理を自信を持って出すお店のおもてなし精神に触れ、心満たされました。
イタリアでの食事は幸い美味しいところにしか行き当たっていませんが、その中でも「あ~、あそこのごはんは最高だった」と思い返すのは、お店の人と会話して、料理のことや地域のことを教えてもらいながら食べるものを決めて、それが美味しかったときのことです。
大げさな響きかもしれませんが、魂が暖かく触れ合うかんじ。
そういうときの会話は片言の英語だったりするものですが、自分のお店のこの地方のこの料理を食べてみてほしいという情熱はいとも簡単に伝わってくるものです。
そして、そんなお店の人を信頼して注文し、それが美味しかったときの嬉しさ。
そんな食事は、ただ食べ物だけが美味しかったときよりも長く強く記憶に残りますね。
美味しい記憶とはそういう記憶です。
幸せなことですね。
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ピエロ・デッラ・フランチェスカの「聖十字架伝説」徹底解説&アレッツォでの見学ガイド
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