アメリカの飛行機を降りるときの暗黙の了解
先週末、サンフランシスコ空港からアリゾナへ飛んだときのことです。
満席の飛行機でしたが、無事定刻でフェニックス空港に到着。
乗客が降り始めて、わたしの列の番が来たので、通路に出て座席の上のスーツケースの取っ手に手をかけたときでした。
横からあからさまなため息が聞こえ、
“Excuse me!”
と苛立ったかんじの女性の声がしたかと思うと、スーツケースを降ろそうとしているわたしを半ば押すようにして、若いアジア人女性数人が通路を強引にすり抜けて行きました。
その様子を見ていたわたしの後ろの列の年配の白人女性が
“They must be in a HURRY! (苦笑)”
と思わずシニカルなコメントをしてしまうくらい失礼なかんじだったのです。
わたしは、てっきり列に横入りしたり順番を守らないことで悪名高い某国の方たちかしらと思いました。
しかし、列の流れがゆっくりだったのですぐに彼女たちの後ろに追いつくと、彼女たちが話しているのはなんと日本語ではありませんか!
えっ!日本人だったの?
うーん、残念だなぁ。
たぶん彼女たちは知らなかったのでしょうが、アメリカの飛行機の機内では、降りるときは一番前の席から順番に降りるのが一般的なんです。
たとえば、足が悪かったりして後でゆっくり降りたい人は席に座ったまま待っていますし、乗継便があるので急がないといけない人は ”I have to catch my connecting flight. May I? “などと断りながら先に行きます。
これが機内での暗黙の了解なので、早く降りたい人はできる限り飛行機の前方の席を確保するのです。
日本の国内線は通路に出て並んだ順でしたっけ?
日本でも席順に降りていた気がしますが、彼女たちを見ているとどちらかわからなくなりました。
思うに、日本って公共交通機関でゆっくりな人に冷たいですよね。
ゆっくりな人を待つ時間ロスってたぶん秒単位なんですけどねぇ。
電車で足の悪いお年寄りに席を譲ったのは何人?
去年、日本滞在中に新潟で電車に乗りました。
田んぼを抜けて行く路線で、1両編成のバスのような電車です。
乗客のほとんどが高校生や大学生で、わたしはその電車の7人掛けの横並びの席に座っていました。
ある駅に止まった時、電車がすぐに発車せず、運転手さんが外に向かって話す声が聞こえてきました。
「乗られますか~?」
「すみませんねぇ、1両編成なので。」
「大丈夫ですか? ゆっくりでいいですよ。」
どうやら、足の悪い老いた男性が2両編成の電車の乗り場で待っていたようです。
老人は片足を引きずりながらやっと電車に近づき、乗り込んできました。
ずいぶん急がれたのでしょう、はぁ、はぁと荒い呼吸をしながら入口の手すりにつかまり、ほどなく電車のドアが閉まりました。
乗客はほぼ全員携帯から視線をあげて、老人と運転手さんのやりとりを聞き、老人が乗り込んでくる様子を見ていたのですが、
さて、あなたは、ここで何人の乗客が彼に席を譲ったと思いますか?
?
答えは、ゼロ。
誰も席を譲らなかったのです。
たったのひとりもです。
席を譲りたいけど何と言っていいかわからなくて躊躇してそうな人さえ皆無でした。
皆ドアが閉まった瞬間、携帯に視線を戻すか、目を閉じたのです。
いやぁ、ありえないでしょう!!! 絶対ありえない!
信じられなかったのですが、どうやら本当に誰も席を譲らない様子。
おじいさんがツラそうなので、40代の(あ、36歳でしたね^^)わたしが席を譲りました。
そして、日本ってこんなに冷たかったっけ?と寂しい気持ちで、稲刈り後の田んぼを眺めながら電車に揺られたのでした。
あなたの荷物やベビーカーが大きくて大変なのは僕の責任じゃない
まだ娘がベビーカーに乗っているときに、娘とふたりで日本に一時帰国したことがあります。
そのとき、とある空港内の連絡バスに乗りました。
わたしは、乗り降りしやすいようにベビーカーは折り畳んで肩にかけ、片手で娘の手を引き、もう片方の手でスーツケースを転がしていました。
バスに乗り、幸い席には座れましたが、降車時に荷物と娘で悪戦苦闘しながら必死でバスの2段のステップを降りていると、私たちの後ろにいたスーツ姿の若い男性から思いっきり舌打ちされました。
これがアメリカで、わたしたちの後ろの男性がアメリカ育ちだったら、その彼か近くの席に座っている人がスーツケースを降ろすのを手伝ってくれたと思います。
それに、バスが止まった瞬間にバスの運転手さんが手伝いにきて荷物を降ろしてくれることも多いです。
日本滞在中、妊婦さんやベビーカーを押している人が乗ってきたときに、乗り降りを手伝ったり席を譲ったりする光景を残念ながら見かけた記憶がないのですが、あなたのまわりではいかがですか?
さらに、日本では、子どもと荷物で大変なのは僕の責任ではないから助ける義務はないと考える人もいるようですね。
それって冷たすぎませんか?
わたしが妊婦だったとき、米軍横須賀基地内のバスに乗ったことがあるのですが、乗り込んだ瞬間、まるで条件反射のように男性たちが5人くらい一斉に立ち上がって席を譲ってくれてびっくりしたのを覚えています。
そのときは軍ではそういう規律もしっかりしているのかなと思ったのですが、
その後アメリカに引っ越して、一般社会でも同様に親切な行為が当たり前のこととして行われているのに見慣れると、日本での公共交通機関での無関心な光景は冷たく見え、残念に思えてなりません。
おわりに
いかがでしたか?
実はこの記事で紹介したケースに共通する解決策があるのですが、何かわかりますか?
それは親切心 Kindness と同情心 Empathy です。
わたしは、日本人は親切でないのではなくて、他人に親切にすることに慣れていないだけなんだと思っています。
ですので、より多くの人が他人に親切にすることに慣れたら、日本の社会はもっと暖かくなるのではないでしょうか。
Kindness と Empathy は、わたしたちが生きる空間をレベルアップさせる魔法の雫のようなもの。
皆が持っていて、使っても使っても減らないレアなもののひとつです。
どうぞ、毎日、冷たい人ではなく親切な人でいることを選んでくださいね。
日本、そして世界中に Kindness と Empathy が溢れていくことを願っています。
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