マラネッロとモデナで出会った美しいフェラーリの数々。
折角出会いがあったのだから、きゃ~可愛い?で終わらせずに、もっとフェラーリのことを知りたい…。
この記事はそんな思いで書いてみました。
もしわたしのような車素人のあなたが、写真を見てナニこのお洒落な車!とピンときたら、ぜひ読んでみてださいね。
きっと、それって何?と疑問に思うところはわたしと同じだと思うので、そこをオタクのわたしが調べて解明しておきます。
また、本が書けるくらい車とフェラーリの知識豊富なあなたは、師匠が弟子を見守るやさしい眼差しで目を通して頂ければ幸いです。
ナニ!素人はそんなことが気になるのか!と、新たな発見があるかもしれません(笑)。
というわけで、車素人女子にもわかるフェラーリのおはなしです。
ベルリネッタの意味とは?フェラーリモデル名を解読
Ferrari 250 GT Berlinetta
“Passo Corto”
“SWB”
マラネッロのフェラーリ・ミュージアムで最初に目に飛び込んできたのが、写真のフェラーリ250GTベルリネッタ・パッソ・コルトSWBでした。
どの角度から見ても美しいんですよ、これが!
それにしても、車の名前、長いですよね。
フェラーリ 250GTベルリネッタ・パッソ・コルトSWB。
フェラーリ はともかく、モデル名がまるで暗号チックな…。
まずはこれを解読してみましょう。
ベルリネッタ
ベルリネッタって女の子の名前っぽいですよね?
綴りを見るとベルリン+接尾辞なので、ベルリンに住む女性のことをイタリアではそう呼ぶのかしら?と一瞬思ったのですが、
いやいや、コテコテにイタリアンなフェラーリが、わざわざドイツを名前に持ってくるわけないし…。
調べてみると、女の子はまったく関係ありませんでした^^が、ドイツはまんざら間違いでもなかったのです。
ベルリネッタの歴史は17世紀にさかのぼり、フリードリヒ・ヴィルヘルム ブランデンブルク選帝侯がイタリア・ピエモンテ州の職人に造らせた馬車に由来します。
この馬車は屋根付きで前後に向き合うシートがふたつ。
当時使用されていた屋根なしの馬車よりもエレガントな外見で、丈夫で軽く転倒しにくいなどの特徴がありました。
フリードリヒ・ヴィルヘルムはこの馬車に乗ってブランデンブルクの首都だったベルリンからパリへ旅したのですが、この新しいスタイルの馬車はパリで大評判になりました。
そして、この馬車のコピーが作られるようになり、フリードリヒ・ヴィルヘルムの出発地がベルリンだったことから 「Berline」と呼ばれ、従来の馬車に取って代わるようになりました。
その後、18世紀に入ると、後ろ向きのシートを取り除いてサイズを小さくした街乗り用の馬車が開発され、「ベルリン・クーペ berline coupé」として知られるようになります。
ちなみにcoupéはフランス語で「切る cut」という意味です。
このベルリン・クーペが後に短縮され「クーペ coupé」と呼ばれるようになりました。
イタリア語のBerlineも上記の馬車Berlineから生まれた言葉で、「屋根付き(ハードトップ)のセダン」を意味します。
BerlinettaはBerlineに接尾辞をつけた言葉で、「小さな Berline =小型の屋根付きセダン」という意味です。
なお、フランス語ではBerlinetteになります。
というわけで、ベルリネッタはフェラーリ特有の名前でなく車のスタイルを表す言葉で、そのほとんどがハードトップ2ドア2シーターを指し、フェラーリ以外のブランドでも使用されています。
とはいえ、「2ドアセダン」より「ベルリネッタ」と呼ぶほうが断然お洒落感アップしますよね!
パッソ・コルトSWB
さて、フェラーリ250GTにはいくつかバージョンがありますが、その中に「パッソ・コルト」と「パッソ・ルンゴ」と呼ばれるものがあります。
イタリア語でコルトは「短い」、ルンゴは「長い」という意味です。
何が長かったり短かったりするのかというと、ホイールベースという前輪軸と後輪軸との距離なんです。
1956年に造られた初代 250GTベルリネッタのホイールベースは2600 ㎜だったのですが、この記事の250GTベルリネッタは1959年から生産された二世代目で、ホイールべースが2400㎜と初代のものに比べて200㎜(= 20 ㎝)短くなりました。
そのため、このふたつのモデルを区別するために、初代の長いホイールベースのものを「パッソ・ルンゴ 」または 「LWB=Long Wheelbase」、2400 ㎜の短いほうを「パッソ・コルト」または「SWB=Short Wheelbase」と呼ぶようになったのです。
GT
「GT」という名称はよく聞きますが、わたし、実はそのわりには意味なんて知りませんでした。
調べてみると、なるほどGTって元々は「Grand Turismo グランツーリスモ = Grand Tour = 大旅行 = 長期のヨーロッパ内の海外旅行」という意味なんですね。
ですので、当初は長期にわたる旅行で長距離ドライブに適した、パフォーマンスの良いラグジュアリー性も高い車種という位置付けでした。
それが、自動車レースにレース専用車両に対してGTクラスが登場すると、GTは徐々にレースでも走れる高性能の車というイメージを含むようになっていきました。
250
250は1シリンダーあたりの容積です。シリンダー1本あたりの容積が250ccなので250。
ここまではグーグル先生がサクッと教えてくれたのですが、
あなたがわたしレベルの車素人だと、「で、何のシリンダーなのよ?」ってとこがひっかかりますよね?
シリンダーはエンジンの構成部品で、ピストンがその中で上下する筒のこと。
下の図で赤い〇をつけたところです。
図とビデオ:深谷和明
フィールイメージ株式会社制作 ビデオ 「レシプロエンジンの仕組みアニメ DOHCピストン機構」 が元になっています。
また、シリンダーは気筒とも表現されるので、6気筒エンジンなどという場合はシリンダーが6本あるエンジンということになります。
ということで、フェラーリ250G ベルリネッタ・パッソ・コルトSWB とは、
- フェラーリ = フェラーリ
- 250 = シリンダーの容量
- GT = グランツーリスモ
- ベルリネッタ = 2ドア2シーターのハードトップ
- パッソ・コルト SWB = 短いホイールベース
以上で名前の解読終了です!
次はミュージアムの展示の説明を見てみましょう。
フェラーリ250GTベルリネッタ・パッソ・コルトSWB
以下、英文の説明を訳してみました。
250 GTベルリネッタSWB(ショート・ホィールベース) は、1959年から1962年にかけてフェラーリによって製造されたスポーツカーです。
V型12気筒3.0Lエンジン搭載で、レース・バージョンの最高出力は 263.6 ~ 283.9 ps (260 ~ 280 hp)、ロード・バージョンは 243.3 ps (240 hp) 。
1959年にパリモーターショーで一般公開されて以来大衆に人気を博し、ツールドフランス、 グッドウッドのツーリスト・トロフィー、ルマン24時間レースのGTクラスで続けざまに勝利をおさめました。
フェラーリ250 GTベルリネッタ・パッソ・コルト木型
Ferrari 250 GT Berlinetta
“Passo Corto”
“SWB”
Wooden Buck
モデナはフェラーリによって世界中に知られるようになりましたが、モデナとその近郊では自動車への情熱を起業チャンスへ巧みに結びつける者が後を絶ちませんでした。
他所の土地のコーチビルダーたちと違ったのは、モデナのコーチビルダーたちはレースで戦える車を主眼に、スティールよりも軽くレースに適したアルミ二ウムを度々採用して製造してきたことです。
セルジオ・スカリエッティ(注:カロッツェリア・スカリエッティの創始者)は、デザインこそ担当していませんが、自身のモデナのファクトリーで、彫刻作品であるかのように車を創り上げました。
エンツォ・フェラーリ氏は、フェラーリ車に異なる2つの道を進ませることを選びました。
ひとつはレースカーのボディーはモデナで組み立てること。
もうひとつは、トリノのピニン・ファリーナにグランツーリスモ・モデルの組み立てをほぼ独占的に任せることです。
サヴォイア家のプリンセスも乗った250GTベルリネッタSWB
最後に、2018年6月にモデナのエンツォ・フェラーリ・ミュージアムに展示されていた250GTベルリネッタSWBをご紹介します。
下の写真は、イタリアの旧王族で、最後のイタリア王ウンベルト2世の娘マリア・ガブリエッラ・ディ・サヴォイア(Maria Gabriella of Savoy)が乗ったモデルです。
シルバーも素敵ですね!
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