「チミチャンガ」をご存知ですか?
チミチャンガは、ざっくり言えば揚げブリトーです。
メキシコ料理やテックスメックス(テキサス州のメキシコ料理)と言われることが多いけど、実はわたしが住むアリゾナ州で生まれたとされる料理なんです。
今日は名前の響きもなんだか楽しい「チミチャンガ」についてご紹介します。
チミチャンガ
タコスやブリトーはおなじみですが、「チミチャンガ(Chimichanga)」はあまり知られていないかもしれませんね。
チミチャンガは、牛肉、鶏、豚などの肉と野菜を小麦粉のトルティーヤで包んだブリトーを油で揚げたものです。
(ちなみに、ソノラ砂漠エリアではブリトーのことをブロ(burro)と呼びます)
キツネ色に揚がったチミチャンガを、サルサやワカモレ、サワークリーム、チーズなどと一緒に食べます。
ミニチミー
わたしがこれまでに行ったアリゾナ州ツーソンのメキシコ料理レストランのほとんどでチミチャンガを出していて、たいていレギュラーサイズのチミチャンガのほかに、特大サイズとミニサイズがあります。
特にミニサイズは「ミニチミー」と呼ばれ地元の人たちに親しまれています。
ミニチミ―は見た目は春巻きなので、日本人にもとっつきやすいし、フィンガーフードとしてパーティーでも良く見かけますよ。
チミチャンガの発祥はアリゾナ州?本家は?
チミチャンガの発祥には諸説あり、アリゾナ州にはチミチャンガの生みの親を名乗るお店が何軒もあります。
どのお店が本物と特定するのは難しいようですが、その中で最有力とされるのが、ツーソンの El Charro Cafe とフェニックスの Macayo’s Mexican Restaurantsです。
El Charro Cafe 【ツーソン】
わたしがツーソンに住んでいるからかもしれませんが、一番よく耳にするのは、ツーソンの老舗レストラン El Charro Cafe がチミチャンガの起源という説です。
El Charro Cafe が開業した1922年のこと、
カフェの創業者モニカ・フリン(Monica Flin)さんが牛ひき肉を使ったタコスを揚げようとしていたとき、誤ってブロ(ブリトー)を鍋に落としてしまい、油が飛び散りました。
そのとき、とっさにスペイン語の Ch ワード(英語の Fワードのようなカスワード)が口から出そうになったのですが、その場に幼い姪と甥がいたのであわてて Chワードを「Chimichanga!」と言い換えたのが、Chimichanga の始りだそうです。
ちなみに「チミチャンガ Chimichanga」 は英語では「whatchamacallit」や 「thingamajig」と似たような意味合いだということなので、「えっと、あれなんて言うんだっけ?」というかんじですね。
Macayo’s Mexican Restaurants【フェニックス】
もうひとつ有名なのは、フェニックスの Macayo’s Mexican Restaurants がチミチャンガの起源だという説です。
Macayo’s の創業者ウッディ・ジョンソン(Woody Johnson)さんによると、彼こそがチミチャンガの生みの親。
なんでも1946年、Macayo’s の前身 Woody’s El Nido で試験的にブリトーを油で揚げてみたのが始りだそう。
この揚げブリトーは大人気になり、1952年にお店が現在の Macayo’s になる頃にはチミチャンガはレストランのメインメニューのひとつになっていたといいます。
で、チミチャンガの生みの親は誰?
Macayo’s(フェニックス)のウッディ・ジョンソンさんは1999年に亡くなっていて、現在 Macayo’s のディレクターを務める彼の孫のリード(Reed)さんによると、家族の中で誰もチミチャンガが生まれた日や初めてメニューに載せた日を覚えていないと言います。
とはいえ、チミチャンガは最初からチミチャンガという名前だったそう。
一方、El Charro Cafe(ツーソン)のモニカ・フリンさんの姪孫カーロッタ・フローレスさんによると、チミチャンガが生まれた日、彼女の母親がキッチンにいたのだそう。
そして、チミチャンガはその日以来「チミチャンガ」という名前で常にメニューに載っていて、最初はビーンズとレッドチリだけを使っていたのが、後に肉を入れるようになったということです。
どちらのお店も公にいがみ合うわけでもなく、チミチャンガの本家の座を争う気はなさそうです。
チミチャンガの発祥説は他にもいろいろ
チミチャンガの発祥については、El Charro Cafe と Macayo’s 以外にも、ネット上に色々な噂があるのでランダムにあげてみると…
・アリゾナ大学の民俗学者ジム・グリフィスさんによると、ツーソンのパスコ・ヤキ族(Pascua Yaqui Tribe)の村で1950年代中盤にチミチャンガを見たことがあるそう。
・20世紀はじめに鉄道建設のためにアリゾナに移民してきた中国人がチミチャンガの生みの親だという説
・1929年にメキシコ、チワワの El Charrito というレストランで生まれたという説
・ノガレス(Nogales)にあるレストラン La Frontera の Lucy Mesa がチミチャンガを作り出したという説
・ツーソンのレストラン Club 21 が1940年台に初めてチミチャンガをメニューに登場させたという説
…などなど。
チミチャンガ・ミステリーですね!
デッドプールの大好物「チミチャンガ」
チミチャンガは、マーベル・コミックの日本刀を背負うダークヒーロー、デッドプールの大好物としても知られています。
デッドプールは食べ物ラブ度全開で、パンケーキ、ピザ、タコスが大好き、そしてピクルスは大嫌い(お子ちゃまですね^^)と好き嫌いがはっきりしているなんだか可愛いところもあるキャラなのですが、
そんな彼が愛してやまないのが、チミチャンガなのです。
ファンの間では「デッドプール=チミチャンガ」という図式が簡単に成り立ち、デッドプールのフィギュアにはチミチャンガトラックも登場しています。
クリエイターのファビアン・ニシーザによると、デッドプールのチミチャンガ好きは、故マーク・グルンウォルドとの仲間内のジョークを作品に取り入れたいと何年も思っていたのを実現させた結果なのだそう。
世界中で公開された映画にアリゾナ州の名物料理チミチャンガが登場してるなんて嬉しい限り。
いつかアリゾナで映画の撮影もしてほしいな。
おわりに
いかがでしたか?
チミチャンガの本家がどこであれ、メキシコ料理のブリトーが何かのきっかけで揚げ物になってアリゾナ州の料理として定着したという部分はほぼ間違いなさそう。
美味しいアクシデントだったのか、はたまたシェフの創作だったのか?
どちらにせよ、チミチャンガが美味しければいいかな!というのがわたしの見解です。
こんなストーリーを持つ料理が地元にあるって楽しいですよね。
チミチャンガはアリゾナ州の名物料理。
私にはそれだけで十分だったりします。
参考:
Chimi Eat World by Michele Laudig for Phoenix New Times
Chimichanga – wikipedia
食の都市ツーソンの記事、ぜひ読んでみてください。