リヨン トラブールのドア
リヨン旧市街のトラブールのドア
Credit: Yuki Kai

リヨンには、建物の中を抜けて横並びの通りと通りを結ぶトラブールと呼ばれる隠し通路があります。

リヨンのトラブールの数は400以上と言われ、すべてが一般に公開されているわけではないのですが、中には住民でないわたしたちも通り抜けることができるものもあるんです。

そんなトラブールの入り口を見つけて、そっと扉を押してみました。

朝のリヨン旧市街へ

リヨン旧市街 石畳
朝のリヨン旧市街
Credit: Yuki Kai

ヨーロッパを旅する楽しみのひとつは、中世の雰囲気のすっぽり残る旧市街を散策することだと思うのですが、

リヨンにも石畳の素敵な旧市街(Vieux-Lyon)があります。

フランス3日目、ホテルでクロワッサンとコーヒーの簡単だけど美味しい朝ごはんを食べた後、チェックアウトの時間まで旧市街を散歩しようと外に出ました。

前夜ポール・ボキューズのブラッセリ― Le Sud に行ったときに通った橋に出ると、寝ている間にまた雨が降ったようで、川は濁った水をなみなみと運んでいます。

リヨン
Credit: Yuki Kai

ベルクール広場を通り抜け、さらにもうひとつ橋を渡って、ノートルダム大聖堂(Basilique Notre-Dame de Fourvière)のあるフルヴィエールの丘のふもとにある旧市街へ。

前回リヨン旧市街に来たのは前年6月の良く晴れた日でした。

通りにはブションと呼ばれるリヨン郷土料理のレストランのテーブルが並び、平日なのに大勢の人たちで賑わっていました。

3月のこの朝はまだ9時台で、冷たい風が吹き、大聖堂前の広場は人影もまばら。

夜の雨に濡れた美しいサン・ジャン大聖堂 (Cathédrale Saint-Jean-Baptiste de Lyon)を見上げると、青空を背景に雲がどんどん、どんどん流れていきます。

サン・ジャン大聖堂
サン・ジャン大聖堂
Credit: Yuki Kai

広場から続く石畳を歩くと、まだ開店準備さえ始まっていないブションの店先は、テーブルや椅子が通りの脇に寄せられしんとしています。

石畳も建物もしっとりと濡れて光り、ただでさえ風情のある通りには得も言われぬ趣がありました。

トラブールの入り口

トラブールのドア
このドアが開いて…
Credit: Yuki Kai

さて、開店前のお店のウインドウを眺めたり、

パン屋さんで美味しいに違いない揚げたてのベニエを見つけ、5個売りのところを1個だけ売ってもらって味見しながら歩いていると、

深緑の幅広のドアが突然開いて、中からおじいさんとおばあさんが出てきました。

目が合ったので「ボンジュール」と挨拶を交わして通り過ぎようとしたそのとき、

閉じられたドアに金色のプレートが貼ってあるのに気づきました。

ん、なんだろう?

Merci de respecter la tranquillite des habitants de cette traboule en la traversant en silence

(Thank you for respecting the tranquility of the inhabitants of this traboule by crossing it in silence このトラブールの住民を尊重し静かに通っていただきありがとうございます)

おぉっ、これは!!!

隠し通路トラブールの入り口ではありませんか!!!

実は前年リヨン旧市街をひとり歩いたとき、途中で入り口を見つけたらぜひ入ってみようと思っていたのにさっぱり見つからなかったトラブール。

何か観光客用に目立つ看板でも出ているのだろうと思っていたのですが(笑)、そのときは人混みで気づかなかったのかもしれません。

これって、ゲームの攻略法を知っている人だけしか知らない秘密の通路の入り口を見つけた気分とでもいうのでしょうか、

ドアを見つけただけなのに大興奮(笑)でした。

トラブールって何?

リヨン旧市街のトラブールサイン
リヨン旧市街のトラブールのサイン
Credit: Yuki Kai

トラブールは、建物の中や、中庭、階段などを通り抜けるリヨンの隠し通路。

街を平行に走る通りから別の通りへ通り抜けられる近道なのです。

螺旋階段や吹き抜けの天井、アーチ、独特のパステルカラーなど、各トラブールにはそれぞれ違う特徴があります。

リヨンには旧市街 Vieux Lyon とクロワルッス地区 Croix Rousse に400ものトラブールがあると言われています。

そのうちの40ほどが一般に公開されていて、一般公開のものは入り口に写真のようなプレートが貼ってあります。

トラブール traboules という呼び名は、ラテン語の trans-ambulare(to pass through = 通り抜けるの意)が変化したものです。

その歴史は4世紀にさかのぼるといわれ、市民が街を平行に走る通りから別の通りへ通り抜け直接ソーヌ川の水へアクセスするために造られたのがはじまりとされます。

リヨン旧市街のトラブールは中世の間に作られたものです。

一方、クロワルッス地区のトラブールは19世紀にできたもので、当時リヨンで盛んだった絹織物の職工たちが使用しました。

絹は水に濡れただけでシミになるものもあるし、日光で色があせるので、雨に濡れることなく織り上がった絹や織物の材料を運ぶために使ったのだと思われますし、

ウィキペディアには、「絹織物を運ぶ途中でデザインを盗用されないよう、人目を避けるために作られたとされる」と書かれています。

布お好きな方、リヨンにはリヨン織物装飾芸術博物館 Musée des Tissus があります。ここ、博物館の説明書きはフランス語のみなのですが、布好きにはたまらないコレクションですよ♪

Musée des Tissus / Textile Arts Museum
34, rue de la Charité 69002 LYON – FRANCE

また、トラブールは、第二次世界大戦中にはレジスタンスのミーティングに使用されていました。

トラブールを通り抜けてみる

入っていいのかな…?

恐る恐るドアを押してみると…開きました!

入ってみます。

リヨンのトラブール
トラブールの中に入ると先客が
Credit: Yuki Kai

ドアの内側は薄暗くてし~んと静まり返ったトラブール。

昨夜の雨水なのでしょう、時折ピチャッという水滴の音が響きます。

リヨンのトラブール
住民用通路はロックされています
Credit: Yuki Kai

このトラブールは一般人のわたしも通っていいはずなのに、なんだか入ってはいけない他人のテリトリーにこっそり侵入した気分^^。

リヨンのトラブール
トラブール内の吹き抜け
Credit: Yuki Kai

暗い通路を少し歩くと中庭に出ました。

高い建物に四方を囲まれた中庭は上方から光がさし、さっきまでの暗がりとは対照的。

リヨンのトラブール
トラブール内の中庭
Credit: Yuki Kai

それとは逆に、何やら真っ暗なトンネルチックなものがあったり…ちょっとした冒険気分です。

リヨンのトラブール
トラブール内、謎の暗闇
Credit: Yuki Kai

やがてトラブールの反対側にたどり着き、ドアを開けて外に出ると…、

ん、ここどこ?(笑)

きゃ~!これは楽しい?

ロング・トラブールの反対側に出ました!
Credit: Yuki Kai

わたしが通り抜けたのは、54 Rue St Jean から 27 Rue de Boeuf を結ぶロング・トラブール(La Longue Traboule)で、リヨンで一番長いトラブールだったのでした。

この後もうひとつ見つけて、

リヨンのトラブール
落書きはいけませんね!
Credit: Yuki Kai

通り抜けて通りに出ると、

お向かいの2階の窓から猫ちゃんがわたしを見下ろしていました。

リヨン旧市街
Credit: Yuki Kai

トラブールの場所と地図

This is Lyon ウエブサイト掲載のトラブール6つ

27 Rue St Jean ⇔ 6 Rue des Trois Maries
54 Rue St Jean ⇔ 27 Rue de Boeuf(リヨンで一番長いトラブール)
31 Rue du Boeuf ⇔ 14 Rue de la Bombarde
2 Place du Gouvernement ⇔ 10 Quai Romain Rolland
9 Rue des Trois Maries ⇔ 17 Quai Romain Rolland
9 Place Colbert ⇔ 14 bis montee Saint Sebastion(6階建ての階段のあるトラブール)

Les Traboules de Lyon ウエブサイト掲載の地区別トラブールの地図とリスト

トラブールをできる限り制覇したい!というやる気のあるあなたには、旧市街、クロワルッス地区のほかにプレスキル地区のトラブールも網羅されている仏語ウエブサイト Les Traboules de Lyon が役に立つかもしれません。

リヨン トラブールのある地区
トラブールのある地区
Credit: Les Traboules de Lyon

トラブールコース(Parcours)のウエブページを開くと上の地図が表示されます。

ウエブページ上から興味のある地区名をクリックすると、地区別のトラブールの地図が開きます。

地図は、水色で表示されたトラブールを順番に巡るルートが紺色で表示されているので、色々なトラブールを歩いてみたい方に便利です。

リヨン旧市街サン・ジャン地区のトラブール
Parcours Saint Jean

トラブール地図
Credit: Les Traboules de Lyon

クロワルッス地区・東のトラブール
Parcours Croix Rousse Est

クロワルッス地区・西のトラブール
Parcours Croix Rousse Ouest

プレスキル地区・中央のトラブール
Parcours Presqu’Ile Centre

プレスキル地区・北のトラブール
Parcours Presqu’Ile Nord

ウエブページ上の地図右側の Autres choix ボックスの中の Le détail du parcours をクリックするとその地区のトラブールのリストが、Version imprimable をクリックすると地図とリストが一緒になったページが開きます。

わたしは、帰国後にこのサイトを発見したのですが(あぁ、いつものパターン?)

またリヨンに行けたら、これらの地図を参考にトラブール巡りをしてみたいです。 

おわりに

いかがでしたか?

リヨンの街で、建物の扉にトラブールのサインを見つけたら、

そっと扉を押して、秘密の通路があなたをどこに導くのか確かめてみませんか。

窓辺の猫
Credit: Yuki Kai

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