この写真はマルセイユにあるノートルダム大聖堂の塔です。
写真から感じられる言葉は Authority。
Authority は日本語にすると「権威」が一番近いかな。
ここでいう権威とは、特定の分野に精通して専門的な知識を有する人のことです。
さて、毎日新型コロナ関連の情報が入ってきますね。
あなたがわたしのようにテレビを一切見ない人でも、ネットにつながっているだけで、ニュースサイトやSNSのフィードから様々な情報が次から次へと流れて込んでいることと思います。
そんな溢れんばかりの情報の中から、あなたはどの情報を信じ、どの情報を切り捨てるか決めていますか?
情報を選ぶ時のひとつの決め手が「権威性」になります。
この記事では「権威性」を含め、情報の波に飲み込まれないために意識しておくとよいことをご紹介します。
情報の権威性を意識する
たとえばあなたが「マスクをするだけで新型コロナに感染する確率が8割減る」という記事を見たとします。(←事実ではありませんので念のため)
その記事を書いたのは誰ですか?ソースは?
当然ながら権威性が高いほど信憑性が上がります。
(権威とは「特定の分野に精通して専門的な知識を有する人」でしたね。)
新型コロナ関連の情報に関しては、お医者さんが最も権威性のある存在ですが、
そのお医者さんの中でも、新型コロナ感染患者を治療したお医者さんや伝染病が専門のお医者さんのほうが、専門の違うお医者さんより権威性がありますね。
権威性のほかにも、
「8割減る」の8割という数字はどこから来ているのか、その根拠が説明されていますか?
引用記事/論文が明記されていますか?
翻訳された記事ですか?
翻訳過程で消えてしまう情報は意外とあります。
翻訳者の手腕によることもあれば、対象読者の利益にならない事実はあえて省略されてしまうこともあります。
ですので、情報はできるかぎり翻訳記事ではなく、あなたがお住まいの国の権威性の高い情報を現地語で入手するのが一番確実です。
その記事はまとめ記事ですか?
ダイジェスト版的まとめ記事の情報は、元記事のどの部分を採用しどの部分を切り捨てたかで見え方が変わることがあります。
短時間で流れを知りたいときには便利ではあるものの、気になる情報は必ず元記事をチェックすることをおすすめします。
そして、
その記事は読むに値する記事ですか?
情報の波に飲まれないようにするひとつのコツは、入ってくる情報量を自分でコントロールすることです。
あなたの知り合いがシェアしているからといって、権威性の高くない記事を全てクリックして読む必要はありません。
人は見たいものを見る
権威性のほかにもうひとつ意識しておくとよいことがあります。
それは、人は見たいものを見る生き物だということです。
そして、人は基本的に肯定されたい生き物であり、自分で自分を肯定しがちなのです。
どういうことかというと、あなたにまだ断定的ではなくても「これってこうなんじゃないかな?」という考えがあると、
それを肯定する情報だけを無意識のうちに拾いがちになり、逆に、あなたの考えを否定する情報は流しがちになります。
たとえば、
あなたが「日本の新型コロナ対策全然ダメ!サイテー!」と思っているなら、新しい政策が発表されるたびにダメな部分はパッと目につくのに、良い部分はスルーしてしまう可能性が高く、
「日本の新型コロナ対策は素晴らしい!」と思っているなら、さすがね!と思える部分を山ほど見つけ、マズイ部分はスルー。
で、両方のケースに共通するのは、根底に「ほら、やっぱりね!」”I told you so!” と心のどこかで思いたいということです。
これって、お姑さんが「うちのヨメって全然使えないわ~」と思っているなら、粗探しばかりしていびりまくり、
「うちのお嫁さんは息子にはもったいないくらいできるコだわ~」と思っているなら、褒めポイントをどんどん見つけて褒めまくるのと似ていますね。(いつの時代だ…)
当然ですが、見たいものだけを見ていると大事な情報を見逃す可能性があります。
たとえば、こんなこともありました。
わたしが先月フランス滞在中に、トランプ大統領が、フランスを含む特定国からの旅行者の入国を制限する(travel ban)と発表しました。
そのニュースを知ってアメリカに帰国できなくなるかもしれない!と焦った人たちが、旅行の予定を繰り上げて空港に押し寄せ、パリをはじめヨーロッパの空港は大混乱だったようです。
中には通常より相当高額のチケットを購入した人たちも少なからずいたとか。
参考:The Tickets Home Were $5,000. They Paid It. – The NY Times
実はトランプ氏の入国制限は「米国市民とグリーンカード保持者は除く」となっていたのですが、
慌てて帰国した人たちの多くは、その情報を取り逃がしていたのです。
確かに、わたしがニュースを検索して一番最初にヒットしたBBCの記事では、わたしが読んだ時点では「米国市民とグリーンカード保持者は入国を制限されない」ということには触れていませんでした。(後日付け加えられたようです)
しかし、アメリカの人道主義を考えると、アメリカが自国の市民の入国を突然拒否することはありえないと思ったので、より権威性の高い記事を探しました。
BBCの権威性はメディアとしては問題ないのですが、アメリカの情報はアメリカのソースから得るのが確実だからです。
まずはニュースの大元のホワイトハウス、そしてTSA(アメリカ合衆国運輸保安庁)のサイトを調べましたが、何の情報も見つからず。
結局「米国市民とグリーンカード保持者は入国を制限されない」ことを確認できたのは、CNNとワシントンジャーナルの記事だったと思います。
とりあえずちゃんと帰国できるとわかったわたしは、自分に「ほら、やっぱりね!」と言っていましたね^^。
でも、ニュースを検索する過程では、最悪の場合はすぐにホテルをチェックアウトして空港に向かわないといけないことは覚悟していました。
人が見たいものを見せるSNSのアルゴリズム
さて、人は見たいものを見る生き物だ、と書きましたが、この事実を最大限に活用している身近なもの、何かわかりますか?
それは、SNSのフィードやYoutubeなどのアルゴリズムです。
たとえば、フェイスブックであなたがある芸能人の記事をクリックして読み、いいねを押してコメントしたとします。
すると、あなたがその記事にどんなアクションをとったかや何秒見ていたかなどのデータが残り、その芸能人に興味があるとフェイスブックのアルゴリズムに記録されます。
その結果、あなたが次にフェイスブックを開けたときから、その芸能人の記事がいつもより頻繁に登場するようになります。
これは、フェイスブックがあなたが好きそうな記事をあなたのフィードにたくさん送り込むからです。
わぁ?フェイスブックって親切なんだ~と思いました?
あはは^^
からくりはこうです。
あなたがフェイスブックを見る時間が長ければ長くなるほど、あなたがフェイスブック上の広告を目にする確率が増える。
↓
同時に、あなたがその広告から何かを購入したり入会したりする確率が上がる。
↓
すると、広告を打った会社等が、フェイスブックの広告のおかげで売り上げや会員数が増えたと喜んで、新たな広告を打つ。
↓
結果として、フェイスブックに広告費が入る。
…というわけです。
広告費はフェイスブックの収入源なので、このアルゴリズムは徹底しています。
ニュースサイトでも、トップニュースをまず先に表示しつつ、サイドバーなどにあなたの過去の履歴からあなたが好きそうな話題のニュースや関連する広告を表示するところが多いのではないでしょうか。
ですので、情報がインターネットから入ってくる現在は、人は見たいものを見る生き物だということと、インターネットがあなたが見たいものを見せようとするということを意識していないと、あなたに入ってくる情報があなたが見たいものだけに偏ってしまう可能性があります。
もちろん、あなたが必要な専門性のある情報が入手しやすくなるという利点もあるのですが、情報の偏りを防ぐには、フィードによる受け身の情報収集と、自ら検索するプロアクティブな情報収集のバランスを意識してみてください。
おわりに
いかがでしたか?
この記事の内容が、あなたが情報の波に翻弄されないヒントになれば幸いです。
そして、もしあなたが毎日新型コロナ関連のニュースばかりで気が滅入っているなら、携帯やパソコンから離れ、コロナのニュースをお休みしてみてくださいね。