ドレスデンのオペラハウス、ゼンパーオーパー(ザクセン州立歌劇場)でモーツァルトの「フィガロの結婚」を見た夜の体験談です。
ゼンパーオーパーの建築物としての美しさ、ゼンパーオーパー周辺の景観の素晴らしさ、オーケストラの音の良さ、演出の斬新さなどの理由から、あなたがお近くに行かれる際にはぜひ立ち寄ってオペラを観てほしいと思います。
ゼンパーオーパーの歴史やオペラ当日の観客の服装、そしてオペラ公演のチケット入手の際のヒントなどをまとめましたので、ドレスデンに行かれる方やオペラファンの方の参考になれば幸いです。
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イエナから車でドレスデンへ
月曜日の夕方、滞在先のイエナからドレスデンへ車で向かい、まだ明るいうちにゼンパーオーパーに到着しました。
ゼンパーオーパー の裏の駐車場に車をとめます。
駐車場内の標識(写真上)に早速 Semperoper の文字を見つけただけで、ときめきます^^
ちなみに、標識の Altstadt アルトシュタットは旧市街という意味で、ゼンパーオーパーも含む宮殿まわりのことです。
ゼンパーオーパー(ザクセン州立歌劇場)
さて、ゼンパーオーパー(ザクセン州立歌劇場)は、東ドイツ時代にはドレスデン国立歌劇場と呼ばれていたオペラハウスです。
初演は1841年4月。
ゼンパーオーパーの愛称で世界のオペラファンに親しまれるこのオペラハウス、その建物はヨーロッパの美しいオペラハウスのひとつに数えられます。
外側もさることながら、天井の装飾など内装が美しいオペラハウスです。
ゼンパーオーパー Semperoper のゼンパー Semper は、設計者ゴットフリート・ゼンパー氏を指し、オーパー Oper はドイツ語でオペラの意味です。
歴代の指揮者にはワグナーも名を列ね、彼の「さまよえるオランダ人」や「タンホイザー」はこのゼンパーオーパーで初演されています。
ゼンパーオーパーは1869年の火災で一度焼失しますが、ゼンパー氏と彼の息子によって再建。
しかし、せっかく再建されたゼンパーオーパーは、1945年、英米軍のドレスデン無差別爆撃で破壊され、上の写真のような瓦礫の山となってしまうのです。
ドレスデンは歴史的価値の高い建物が多く、軍事施設もない非武装地域だったのに、いったいなんなんでしょう!
この無差別爆撃の徹底ぶりは、知れば知るほど気が滅入るばかりです。
オペラ「フィガロの結婚」
終戦後の1945年8月20日、ゼンパーオーパーの焼け残った会場で、ヨーゼフ・カイルベルト指揮による「フィガロの結婚」が上演されます。
そして、わたしたちがこの日ムリめなスケジュールを押してドレスデンに来たのも、この旅行の直前にチケットがとれた「フィガロの結婚」を見るためでした。
「フィガロの結婚」は、音楽が美しいだけでなく「許し」がテーマなところがわたしはとても気に入っていて、モーツァルト作品の中で一番好きなオペラです。
映画「ショーシャンクの空に」をご覧になった方、ティム・ロビンス演じるアンディが オペラのレコードをかけ刑務所内で流すシーンを覚えていますか?
あの女性ふたりが歌っている曲も、「フィガロの結婚」の中のアリアのひとつ「そよ風に寄せる」です。
(映画ではこのアリアはメタファー的な絶妙な使い方をされていて感心してしまいました…。興味ある方、「ショーシャンクの空に、フィガロの結婚」で検索してみてくださいね。)
アメリカで見た、プラシード・ドミンゴ氏がディレクターを務める LAオペラ版「フィガロの結婚」も、卓越した美しい光の演出でそれは素晴らしかったのですが、ゼンパーオーパー版はどうなのか、興味津々!
ドキドキです。
ゼンパーオーパー周辺の美しい街並み
爆撃後再建されたゼンパーオーパーと周辺のドレスデンの街並みはそれは美しく、この景色を見るだけでも十分に来る価値がありますよ。
上の写真はゼンパーオーパーから見たドレスデンの街並み。
宮殿も道路を渡ってすぐ側にあり、中庭には無料で入れます。
渋滞を見越してかなり早くゼンパーオーパーに着いたわたしたちは、オペラハウスに入る前にツヴィンガー宮殿の中庭を散歩してみました。
夕陽に照らされた庭園をゆっくり眺めて、オペラが始まる前から優雅な気分になれました。
あぁ、こうやって思い出しながら書いているだけで、もう一度行きたくなります…?
ドレスデンって、それくらい素敵なところです。
オペラのチケットが売り切れでもあきらめないで
さて、オペラのチケットなんですけど、
ゼンパーオーパーに限らず、有名オペラハウスのチケットは早い時期に売り切れていることが多いですね。
でも、シーズン通しのチケットを持っている人が行けない日の分を売りに出したり、旅行会社が押さえておいた分を公演日近くに返却したりするケースもあるので、あきらめずにこまめにチェックすると買えることがあります。
この夜のゼンパーオーパーの「フィガロの結婚」チケットも、旅行を計画したときにはすでに売り切れだったのですが、出発直前に空きが出ていたものです。
わたしの好きなバルコニーの上のほうの真ん中の席です?
上の写真で、バルコニー最上階の席の後ろの柵のところに座っているひとたちがいるのがわかりますか?
そこがいわゆる立ち見席です。
と言っても、ゼンパーオーパーでは立ちっぱなしではなくて、背もたれのない椅子に座れます。
ちなみに、その夜は立ち見席も満席でした。
ゼンパーオーパー・観客の服装
その夜の観客の服装は、男性はスーツ、女性はイブニングドレスよりもどちらかというとカクテルドレスやドレスパンツ姿が多かったです。
きちんとしているけれど、ガチガチにかしこまってはいないかんじだったのは、週末ではなくて月曜日だったからかもしれません。
わたしはカクテルドレスにヒールのパンプス。
コートはクロークに預けました。
ちなみに、オペラは上演場所と演目で観客の服装がガラリとかわります。
土地柄もありますが、オペラハウスの格と観客の雰囲気が比例していますね。
ウィーン国立歌劇場(椿姫)ではドレスデンより着飾った人が圧倒的に多かったし、
ミラノ(アッティラ)では毛皮をまとったマダムたち、
バイロイトやミュンヘンの音楽祭となると男性はタキシード、女性はイブニングドレスの人のほうが断然目立っていました。
それとは逆に、昼間の上演ではカジュアル度が上がります。
ちなみに、プレミア(オープニングナイト)でなければ、服装はあまり気負わず好きな服でいいと、個人的には思っています。
わたしがアメリカでオペラを見るときは、きっちりお洒落して行く日もあれば、ジーンズでゆる~く行くこともあったり、と上演内容と場所や時間次第で気楽に楽しんでいますよ。
とはいえ、ゼンパーオーパーは美しいオペラハウスなので、お洒落のし甲斐十分あります!
普段できないよそ行きのお洒落を楽しみたい方は、ぜひ思う存分キメてください?
なお、サンフランシスコ・オペラの記事でも書いたのですが、服装よりも一番気を付けてほしいのは遅刻しないことです。
思いがけない演出だったフィガロの結婚
さて、その夜のゼンパーオーパーの「フィガロの結婚」は、まったく予想していなかった思いっきりアバンギャルドな演出でした。
楽譜もところどころアレンジされていて、
ラビアンローズのメロディーが投入されていたり、
指揮者自らがチェンバロでその部分を演奏したり(絶対映画「アマデウス」のモーツァルトを意識してる~!)、
あまりの斬新さにびっくり!
歌手の方々は皆素晴らしく、オーケストラの音にいたっては本当に美しかったのですが、
なにしろラビアンローズを弾くタキシードを着た指揮者のインパクトが大きすぎて、歌手の方の顔などすっかり忘れてしまいました。
罪な指揮者ですね!(笑)
とはいえ、美しいゼンパーオーパーで大好きな「フィガロの結婚」を観ることができて、わたしにとって夢のような夜になりました。
オペラが終わって外に出ると、ゼンパーオーパー向いの教会がライトアップされていてそれは綺麗?
ドレスデンがあまりにも素敵すぎるので、翌日もう一度ひとりで来ようと決心して、イエナへの帰路につきました。
翌日ドレスデンでおひとりさまのわたしを襲った悲劇:
ドレスデンでバウムクーヘンの老舗クロイツカムへ行く